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4-1 地域に密着した植物工場の取り組み~株式会社リバネス~

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4-1-(1). 空き工場を活用した都市型植物工場と地域連携

植物工場の大きなメリットのひとつとして、設置場所を選ばないという点が挙げられます。そのため、植物工場は、都市やその近郊の空きスペースの新しい利用法として大いに期待されています。都市部で小規模に野菜生産をすることは、生産コストの増加につながりますが、一方で生産者と消費者の距離が近づくことから、流通コストの減少や、輸送中の野菜へのダメージの軽減などのメリットが出てきます。消費者のニーズを迅速かつ的確に把握できること、この点もマーケティングの観点からも大きなアドバンテージとなります。

株式会社リバネスでは、都市部で行う比較的小規模な植物工場の導入コンサルティングを通じて、このような新しい食料生産の可能性を追求した意欲的な挑戦をサポートしています。同社の植物工場導入の特徴は、サポートスタッフの専門性の高さです。農学分野の博士号を持つ研究員、地域活性化・農産物の販路開拓専門のコンサルタントがチームとなって、導入前の予備調査から導入サポート、生育不良や病害などのトラブル対応、工場管理人材の育成、商品のブランド構築までを行います。すでに東京都内でも空き工場を活用した植物工場2 か所が稼動を始めており、2010 年夏には生産した野菜の販売開始を予定しています。これらの植物工場で生産された野菜の一部は、すでに地域の朝市などで、周辺の近郊農家の生産した野菜とともに販売が開始されており、お客様からの評価も高いとのことです。植物工場産の野菜を通じて生産する企業と地域住民との間にコミュニケーションが生まれており、ビジネス面だけでなく企業の社会貢献活動としても新しい可能性が見出されています。

地域の販売所で販売される植物工場産の野菜
地域の販売所で販売される植物工場産の野菜

植物工場の導入だけでなく、その後の維持管理、技術者育成プログラム、販路開拓のサポートを一貫して行う取り組みは、国内だけでなく海外からも注目を受けており、アジアを中心とした新興国からの見学者の受け入れも始まっています。

 

4-1-(2) 店舗併設型の植物工場を活用した店産店消モデル構築

植物工場は、その技術の先進性だけでなく、そのデザイン性やメッセージ性が注目を集めています。先に挙げた日本サブウェイ株式会社の東京デザイナーズウィークでの取り組みに代表されるように、外食産業においても店内に小規模の植物工場を設置し、店内で生産された野菜を使ったメニューを提供するという取り組みが始まっています。

株式会社リバネスでは、店で生産し店で消費するというこの新しい食料生産・消費サイクルを「店産店消」と名づけ、試験的導入・運用を始めています。店産店消ユニット型植物工場では、収穫後すぐに野菜を使うことができるため、鮮度のよい料理を提供することができます。実際、設置店舗でのモニターによるブラインドテストでは、露地栽培やハウス栽培と比しても鮮度・味に関して高い評価を得ています。店産店消ユニット型植物工場では、生産現場が直接消費者であるお客様に見えることから、安心・安全のアピールにもつながります。

店舗併設型の植物工場のイメージ(サブウェイ野菜ラボ丸ビル店)
店舗併設型の植物工場のイメージ(サブウェイ野菜ラボ丸ビル店)

一方で、消費者の目を引くために、植物工場技術をどのように魅せるかの工夫が求められます。植物工場を導入する店舗では、コンセプトから店舗デザイン、レシピにいたるまでが一体となった技術と芸術の融合空間が求められます。同社では、このような店舗設計のために必要なポイントをノウハウ化し、サイエンスアートプロデューサーによる店舗設

計コンサルティング事業へと発展させました。サイエンスアートプロデューサーは、アートとしての店舗設計のみならず植物工場の維持管理に必要な技術にも精通しています。2010 年7 月には、日本サブウェイ株式会社に協力し、店舗併設型の植物工場の展開を開始します。店舗に併設することでその場で収穫した安心安全で新鮮な野菜を用いたサンドイッチの提供が可能になります。このモデルは、安心安全の食材の利用することで、企業のブランディングとしてもその先進性が注目されています。

店産店消ユニット型植物工場は、消費者にとっては安心安全の食を楽しむとともに、食育としての可能性を秘めています。今後、集合住宅や教育機関、病院や介護施設等への導入の広がりが期待されます。

 

4-1-(3). 地域活性化のために活用される植物工場技術

植物工場技術は、都市部だけでなくさまざまな課題を抱える地域の活性化のためにも役立つ可能性を秘めています。たとえば、沖縄地域では、その地理的要因から、夏場は高温なために葉菜は育ちにくく、良質な農業用水の確保が難しく、台風や干ばつ、病害虫が多発しており、地域内の出葉菜生産の効率化・安定化が課題となっています。さらに、生産者の高齢化に加え、高温による夏場の労働環境の悪化、流通輸送コストなど多くの課題を抱えています。現在、夏の県内市場で見られる葉菜類はほとんどが県外産のものです。

これらの課題を克服するために期待されるのが、外的な要因に影響を受けにくい植物工場技術です。現在、沖縄県では完全閉鎖型のモデルを活用して太陽光や太陽熱、海洋深層水を活用する亜熱帯特有の新システムの開発が進められています。一例として、琉球大学農学部の研究チームは、太陽エネルギーや再生可能な有機資源であるバイオマスを活用した沖縄型植物工場のモデル構築を進めています。このモデルでは、太陽熱集中パネルで集めた熱エネルギーを熱交換器などで変換し、工場内の冷却・空調に利用するとともに、家畜の排せつ物や汚泥などのバイオマスを電気エネルギーやバイオ燃料に変え、太陽光の代わりに植物に当てる電照や動力システムに利用する技術を使うといった地域の特徴を活か

した技術が用いられており、その実現に期待が集まっています。同社でも沖縄ならではの技術開発のため、自社の沖縄拠点を中心として地域の技術人材の育成を進めるとともに植物工場の設計・設置・運営を行う株式会社LD ファクトリーを設立し、沖縄型植物工場モデルの普及に努めています。

沖縄型植物工場モデルが成功することは、地域住民だけでなく、観光客が沖縄の地野菜を楽しめることにもつながります。また、地域内でエネルギー確保から生産、消費までが完結するということは、県民の食料安全保障上も重要で観点であるといえるでしょう。現在、地球上には砂漠化、塩害、土壌汚染などこれまでの農業技術だけでは、農作物の栽培が困難な地域が広がっています。植物工場は、これらの地域課題を解決する可能性を秘めた技術です。究極的には宇宙空間にまで適応可能なシステムである、このことは植物工場が持つ技術の広がりやビジネスの可能性を大いに示しているのではないでしょうか。

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