ホーム 植物工場物語 グリーンサブウェイプロジェ...

グリーンサブウェイプロジェクト~店産店消への挑戦①~

4179
0
リバネス丸 幸弘
リバネス丸 幸弘

株式会社リバネス

代表取締役 丸 幸弘

 

緑のサイエンス

みなさん、緑は好きですか?森や草原は緑色ですね。野菜も緑色です。自然の緑に囲まれているとリラックスできますよね。緑のない殺風景な場所と、緑の多い場所とを比べれば、当然、緑の多い場所の方がよい、と思う人が多いと思います。このように緑色は感覚的に好まれる傾向にありますが、実は、その効果は科学的にも実証されています。神経系の鎮痛作用、緊張緩和、睡眠作用などのほか、目を休ませたり、ストレスを緩和したりなど、さまざまな効果があることがわかっています。さらに、緑色の植物を食べることで体の老廃物を排出するなど、さらによい効果を得ることができるのです。

話を植物に移しましょう。なぜ、植物は緑色なのでしょうか。普段私たちに降り注ぐ太陽の光は白色に見えますが、実は赤・青・黄・緑などさまざまな色が合わさって白く見えています。その中で植物は、主に赤と青の光を吸収し光合成を行っており、緑色の光は反射しています。そのため私たちの目には、植物が緑色に見えているのです。植物というのは、光合成という能力で光エネルギーを吸収して、二酸化炭素と水を利用して酸素と糖分をつくります。その植物を牛などの動物が食べて、その動物を私たち人間が食べている。生態系の中で基本となるのが植物なのです。なので、生命や環境を考えるとき、植物というのは絶対に無視できない存在です。

 

進化する農業

日本では昔から農業が行われてきましたが、各地の生産者の努力によって、どんどん安くておいしい野菜が私たちに届くようになりました。その後、一年中野菜を食べたいというニーズに合わせて、季節外れの野菜をつくるために施設園芸が発展してきました。そして、さらに通年で安定的に野菜を生産するために、光も制御できる植物工場が発展してきたのです。

植物が生育しやすいように、温度、光、湿度、栄養分をIT を使ってコントロールし、できるだけ早く安心安全な野菜をつくっていこうというものが植物工場です。雨の多い夏場や台風などが来たときに野菜の値段が高騰することがありますが、植物工場でつくられた野菜は天候の影響を受けないため、いつでも安定した価格で提供できます。また、農地での栽培より単位面積当たりの収穫量を増加させることができ、農薬を少なくできます。水や光や温度など、徹底的に管理された環境のもとで育てていくので、一定の規格、一定の栄養価をもった野菜が大量に採れます。現在は、17 毛作が可能というところまで来ています。

植物工場の光源としては、蛍光灯のほかにLED、有機EL などの技術が発達しています。エネルギーコストの低い光を用いることで、効率的に光合成を誘導して植物を育てます。LED であれば青と赤の光だけを当てればよいのです。また、二酸化炭素の制御も重要で、屋外の平均濃度385 ppm は植物にとってはまだまだ不足していて、もっと効率よく光合成を行わせるためには1000ppm 程度が必要です。栄養分は、育てたい野菜に合った栄養を水に溶かして与えます。露地栽培では、農家さんがまいた肥料が雨水に流されて、野菜に効率よく吸収されずに、代わりに近くの川が富栄養化することがあります。植物工場であれば、閉鎖された環境で必要以上の栄養を与えないことで、環境負荷が低減します。

 

農業×デザイン「グリーンライフスタイル」の提言

「農業を街の中にあふれさせたい、安心安全な食を街の中でつくれないか」というのが、私が長年抱き続けた想いでした。自然の畑で実っている野菜と、工場で育った野菜、それぞれの写真を見せれば、みんな畑の方を食べたいと考えると思います。これは、緑で覆われた畑を見たときに、人は心地いいと感じるからなのです。

そこで考えたのは、植物工場のしくみを、デザインと融合させて街なかの心地のいい場所にできないか、というアイデアです。そこで、デザイナーの長岡正芳さんと協力して、街の中に溶け込んだ心地よい緑の場所があり、そこから安心安全な食べ物を得られるというライフスタイル「グリーンライフスタイル」を着想しました。そこで、デザイン性のある植物工場をサブウェイさんや長岡さんとともにデザイナーズウィークに出展しました。

植物工場の課題は、1 つ目がマーケットの展開です。植物工場でつくられた野菜を手にしたことがある方は、まだあまりいないと思います。今後もっと広げていく必要があります。もう1 つはみなさまの理解ですね。植物工場の野菜を安心安全で心地よく手に入れていただくための第一歩が、このサブウェイさんの取り組みです。私たちは新しい植物工場モデル「サブウェイ店舗併設型植物工場」を提案し、「店産店消」という言葉を考えました。店で野菜をつくって店で消費する、地産地消を超えた「店産店消」です。ぜひ覚えてください。

前の記事4 未来への挑戦
次の記事おわりに
塚田 周平/Shuhei Tsukada 執行役員 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻修了 博士(農学) 上級バイオ技術者 【専門分野】農学、分子生物学、土壌微生物学 設立初期よりリバネスの運営に参加。教育・研修事業、各種ライティングに関する実践を学んだ後、アグリ分野の先進技術開発・導入、地域創業エコシステム構築事業の立ち上げを行う。

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here