植物工場を理解するには、まずは植物にフォーカスしましょう。仕組みを理解するカギになります。
光合成とエネルギー生産
植物に限らず、すべての生物は、生命活動を維持するためにエネルギーを必要とします。エネルギーは、炭素を含む物質、いわゆる炭水化物を分解することによって得られます。たとえば、動物では、他の生物を捕食することで炭水化物を摂取し、酸素を利用しながら分解してエネルギーを持つ物質アデノシン三リン酸(ATP)を生産します。
水・光・二酸化炭素から炭水化物を産む
私たち人間も、他の生物を食べることでエネルギー生産のもととなる炭水化物を摂取しています。一方で、植物は、光のエネルギーを使ってブドウ糖を生産することができます。これが光合成です。植物は、大気中の二酸化炭素と水からブドウ糖を生産し、これを分解してエネルギーを生産します。
光合成は、植物細胞の中にある葉緑体で行われます。葉緑体には、光のエネルギーを捕らえる葉緑素と呼ばれる色素があり、光エネルギーを使って水を分解しながらATP を生み出します。そのATP を使って、二酸化炭素からブドウ糖を合成するのです。そのブドウ糖は動物と同様にミトコンドリアでATP を生産する原料となります。
植物の体はタンパク質、核酸、脂質などの有機物でできており、すべてに炭素が含まれています。エネルギー源となるほかに、これらの有機物をつくる際にも、植物は光合成で得られたブドウ糖を使用します。つまり、光合成は生命に必要なエネルギーを得るだけでなく、植物体を構成するうえでも非常に重要な機構なのです。