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施設園芸から環境調節へ

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施設園芸から環境調節へ

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もう1つ、安定的な生産に貢献した技術として、施設園芸が挙げられます。それまでの農業は、作物を自然の気象条件のもとで栽培する露地栽培で行われてきましたが、それでは作物の生育に適した時期にしか栽培できず、毎年の収量も天気や台風などの気象条件に左右されてしいます。そこで、ビニールハウスやガラス室を利用して温度を調節する施設園芸が考案され、栽培できる時期が大幅に広がりました。特に、冬季の日照時間が少なく、冷え込みも激しい北欧地域などで、環境を調節する技術が徐々に蓄積されていきました。


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次世代型農業、植物工場

肥料を溶かした養液を利用する水耕栽培法は、土を使わずに閉鎖空間で栽培を行うことができるため、連作障害や土壌の流出など、従来の農業が抱えていた問題を回避できる可能性があります。実際に、連作障害を解決することで周年栽培が実現し、生産性を増大させることができます。そして、1990 年代に入って普及し始めたのが施設園芸と水耕栽培を組み合わせた植物工場です。これまでの養液制御、温度制御に加えて光環境も制御要因として加え、地上部の光、温度、湿度、二酸化炭素、地下部の培養液組成、温度環境などを制御することによって、季節や場所にかかわらず年間を通じて作物にとって最適な環境を維持し、連続的に生産することが可能になりました。また、栽培棚を多段にすることで単位面積当たりの収穫量を何倍にも向上させることができます。水耕栽培を高度に集約することによって、高い生産効率を実現することができるのです。

食料需給を支えられるか?

2050 年には地球人口は90 億人になるといわれており、人類が持続的成長を続けることは食料生産の観点からも難しくなってくると言われてます。いかに生産効率のよい「農地」を確保するかは、大きな課題となっているのです。気候変動や土壌環境に影響されない植物工場は、人類の食料生産を支える重要な技術になる可能性を秘めています。さらに、現在の日本は、農業の担い手不足という深刻な問題も抱えています。その点についても、植物工場は少人数で管理することができ、今後の日本の食料生産において重要な技術になることが考えられます。通年で安定的に、かつ安心安全な質の高い作物を生産できるという点は、食産業にとっても大きなメリットとなるでしょう。

しかし、それでは植物工場は、世界の食料需給を支えられる農業技術となるでしょうか?現段階では、それは大いなるチャレンジだとしか言えません。やはり、植物工場でコストに見合った形で生産可能な作物を、「穀物」にまで広げることができなければ、その役割を果たすことはできないと思います。イネやトウモロコシ、大豆、ジャガイモ・・・これらの可食部は光合成産物が蓄積された器官であり、それを支える光量が必要になります。しかし、世界の食料需給の一助となるだけの生産量を現在ある植物工場の仕組みで補おうとすると、それは膨大なコストになるのは自明です。

それでは食料需給を支える植物工場とは、どのような形なのか?リバネスでは、今まさにその議論を開始しています。(2011.11.30追記)

 

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