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産学連携で植物工場①~日本のインフラとして植物工場を~

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■予測できないから面白い、植物生産
「そもそも植物工場の研究は、NASAとの共同で月や火星でどのように野菜を育てたらよいか、という研究を行ったところから開始しました」。もともと機械工学が専門でしたが、機械のように予測どおりに作れない植物に強い興味を持ち、修士課程から植物生産にテーマを変更。博士課程では米国に渡り、植物組織が環境にどのように応答するのか、その研究をまとめて日本に帰国しました。その頃ちょうど、植物工場という言葉が日本で注目を浴び始めていたといいます。
「当時の植物工場は、面白い技術だね、という注目のされ方でした。90年代はバブル期に資金のできた企業が新規事業として取り組んだものの、成功しなかった。しかし、今注目を浴びているのは、植物工場が気象変動や安心・安全を求める消費者の声から、今の日本で強く求められる技術になったからではないかと考えています」。2010年の猛暑で、野菜の価格が高騰したことは記憶に新しいでしょう。今後、農業を行う上で必要となる技術であるという見通しが立ち始めているのです。

 

↑サブウェイ野菜ラボ大阪府立大学店の店内に設置された小型植物工場

■新たな農業生産のインフラへ
しかし、今の段階では、企業が一から植物工場を立ち上げ、採算の取れた事業として成立させるのは困難といえます。村瀬教授が考えているのは、「農業生産のインフラとして植物工場が整備される」というかたちです。農業用水を確保するためのダムや堰(せき)、区画整備された水田や畑、農産物などを運搬するための農業用道路など、日本の農地の多くは60年以上前に整備されたものが使われています。修繕が必要な場所も多く、税金によって古いインフラが保たれているのが実情だと村瀬教授は指摘します。「転換期は60年が目安。古いインフラを維持するだけではなく、植物工場のような安心安全というニーズに応
える生産体制を、国が整備してもよい」。国の整備のもとに植物工場が立ち上がれば、生産する事業者は採算を取りやすくなります。

 

↑「植物工場のような安心安全というニーズに応える生産体制の整備を」と語る村瀬治比古教授。

■開発と消費が直結する、学産学消
2011年4月20日、「学産学消」をテーマに、植物工場研究センターで生産されたレタスを100%使用する「サブウェイ野菜ラボ大阪府立大学店」がオープンしました。国が開発を進めてきた生産技術を、消費者は店で学ぶことができ、かつ、それをその場で食べることができるという、開発と消費が直結したこれまでにないかたちなのです。ここでは、植物工場研究センターの実証品目として力を入れているアイスプラントを使用し、サブウェイと「アイスプラントベジー」を開発。ほかにも、野菜の機能性を高める研究開発、付加価値の高いサンドイッチの提供について、共同研究が行われる予定です。
また、店内には小型の植物工場ユニットが設置され、訪れた人が生産の仕組みをその場で理解することができます。「インフラとして植物工場の技術が広まるには、まずは消費者の理解が第一。飲食店に小型の植物工場が置かれ、消費者が理解できる場としても活用されるという流れは、とてもよいと思います」と語る村瀬教授。植物への興味から走り始めた教授の夢は尽きることなく、新たな産業としての可能性を増しつつあります。

 

↑サブウェイ野菜ラボ大阪府立大店で販売されている、アイスプラントベジー(¥340)

 

(BeAGRI 03号より転載)

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