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3-3 事業としてのメリットと課題

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3-3-(1). 植物工場で生産するメリット

植物工場で野菜を生産するメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。まず、国産の安心安全な食材を安定的に生産することが可能であること、需要供給のバランスに応じて生産を調整し、環境配慮や効率を高めた生産計画が可能であることが挙げられます。技術革新やエネルギー対策で関連周辺産業が飛躍的に発展していることも、生産効率の向上に寄与すると考えられます。たとえば、生育速度や歩留まりをデータとして蓄積しておくことで、外食・中食・小売企業などからの注文内容を事前に受け付け、その生産量に合わせて植物工場を稼働させることができます。また、テクスチャーや糖度などの品質についても、生産環境のデータを蓄積しておくことで、発注側のニーズに合わせてカスタマイズすることができます。つまり、これまでの生産手法にはない、顧客ニーズに応えるサービスとして発展させることができます。

さらに事業の観点からいえば、設置場所を問わずさまざまな企業の参入が比較的容易であることもメリットとして挙げられます。これまで、野菜を安定的に供給するには、さまざまな場所で生産を行う複数の提携生産者との契約を行う必要がありましたが、植物工場は設置場所を選ばないので、より自由に戦略的に立地を考え、事業計画を立案することができます。

 

3-3-(2). 植物工場野菜の可能性

植物工場産の野菜は、安心安全、清浄といった特徴を活かして市場へ展開できる可能性を秘めています。たとえば、冷蔵庫での保持期間が長いという長所を活かした「独居者向け長期保存可能野菜」の販売が挙げられます。外食・中食業者向けには、消費者の水洗いの手間を軽減し、簡便で環境に優しいカット野菜の販売、歩留まりの低さや虫の混入のなさ、無洗浄、安定生産を売りにした業務用野菜が考えられます。また、施設や学校の給食向けとしても、安全性の高い野菜を提供できることは大きなメリットになるでしょう。食中毒の危険性から生野菜の利用を中止している学校給食向け、病院および機内食用として細菌数の低い安全野菜を売りにした生サラダ用野菜の販売が可能性として考えられます。

 

3-3-(3). これからの課題

一方で植物工場がさらに発展するためには、乗り越えるべき課題がいくつもあります。植物工場の活用および普及・拡大を目的として農林水産省と経済産業省が設置した専門家によるワーキンググループ「植物工場ワーキンググループ」は、平成21 年4 月に公表した報告書内でその課題を指摘しています。

まず、生産面の課題としては、生産コストの縮減、栽培可能な品目の拡大、品質の向上・安定化のための技術開発を挙げています。また、消費者ニーズに合った農産物を安定的に生産するためには、マーケティング・施設管理・人材管理等といった経営面の資質に加え、農産物栽培技術に精通した人材の育成が必要です。さらに、販売面の課題としては、安定的な販売先を確保しかつ安定的な単価を維持すること、植物工場で生産された野菜の消費者イメージの向上を行うことが必要であると指摘しています。このような新しい生産技術を正しく社会に伝えていくことは、植物工場産の野菜の普及につながります。コストを縮減する一方で、植物工場の野菜には新たな付加価値を生む努力が必要とされるのです。言うまでもなく、科学的に栄養成分や機能性成分を分析し、植物工場産の農産物の価値を高めていくことも必要です。

また、植物工場は新しい技術であるがゆえに、設置・建築面においても混乱が起きる場合があります。その1 つが制度上の問題です。植物工場は日本標準産業分類上においては、農地を使わずに農産物を生産することが可能な「農業」に位置付けられています。しかし、一般に「農業」であるとの理解が定着していないため、農業生産法人を含む一般的な農業者向けの支援制度が受けられないケースがあるといった問題が起きています。また、「農業」を行う「工場」であること(特に完全人工光型)から、自治体が企業誘致や建築確認を行う際に対応に迷う場合がある、といった報告もあります。これらの課題は、植物工場が普及していくうえで克服されるべき問題だといえます。

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塚田 周平/Shuhei Tsukada 地域開発事業部 部長 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻修了 博士(農学) 上級バイオ技術者 【専門分野】農学、分子生物学、土壌微生物学 設立初期よりリバネスの運営に参加。教育・研修事業、各種ライティングに関する実践を学んだ後、先端技術を産業化する事業を展開し、地域産業への貢献を目指している。

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